ごえんをつなぐコラム

四格を育む⑭

シナジー?ダイバーシティ?ふわっとしたイメージでビジネス用語を語るのはもうやめよう

DATE19.04.01

はじめまして、中小企業診断士の三枝 元です。様々な企業のお話を伺い経営のあらゆる課題について支援しながら、資格の学校TACの講師もしております。これから企業経営をしていく中で、ちょっとしたポイントや私が感じたお話をしていきたいと思います。

 

では、早速ですが、最近、メディアでの報道や巷での議論を聞いていると、どうしてもふわっとした言葉のイメージだけで話をしていると感じることが多々あります。

 

ケース1:具体的な実現手段を考えていない

たとえば企業の記者会見の場で次のような発言をよく聞きます。

「今回の経営統合で両社の強みをいかし、シナジーによる企業価値の向上が期待できるものと考えております。」

「シナジー」はみなさんも顧客との打ち合わせや社内のミーティングでよく耳にするのではないでしょうか?私なら「具体的に両社でどのようなシナジーが生まれるのか?(どうやってシナジーを生み出すのか?)」と思わず尋ねたくなります。両社が合わさればシナジーが生まれるという雰囲気で語っているとしか思えないのです。ちなみに経営統合の約8割は失敗するといわれており、実際にシナジーを生み出すことは容易ではありません。

そういえば、某東京都知事も就任直後に会見で「シナジー」を連発していましたが、その後実際に何かシナジーが生まれたという話はまったく聞きません。

他に「ブランド化」「企業価値の向上」「ブルーオーシャン戦略」「ダイバーシティ」なんていうのも頻出用語で具体的な実現手段を考えずに安易に用いられる傾向があります。

 

ケース2:そもそも言葉の定義が間違っている

次にそもそも言葉の定義が間違っているケースです。

「今回の新事業でお客様との共存を図ることが、当社のビジネスモデルです。」

ビジネスモデルとは上のように事業目的でもなければ、事業内容の説明でもありません。ですから、たとえば「モノを仕入れて店舗で販売して儲ける」ではビジネスモデルではないのです。

ビジネスモデルは端的には「どうやって儲けるかを記述したもの」であり、「対象顧客・製品やサービスの内容・提供手段」のほかに、「課金のしかた(儲けかた)」がなければそもそもビジネスモデルとはいわないのです。

 

ケース3:言葉の定義がないケース

最近の頻出ビジネス用語の1つに「働き方改革」がありますが、たとえば時短であったり、ダイバーシティであったり、AI活用であったりと、話を聞いていると人によって意味することは様々です。それぞれ考えているイメージが違うので、「働き方改革」をテーマにしても議論が噛み合いません。

ちなみに私なら「働き方改革=効率性の追求の取り組み」と定義し、「効率性=アウトプット÷インプット」と分解したのち「今よりアウトプットを向上できないか」「今よりインプットを削れないか」の2つを考えます。

 

ビジネス用語を本当に理解している?

ついつい使ってない? そのビジネス用語、説明できますか?

 

今回、お話したいことは、「言葉を具体的に定義する」ということです。一般的にどうもキーワードが先行してしまい、経営用語やカタカタ用語を並び立てればなんとなく説明した気になっているのかもしれませんが、実際は中身がなく、何ら建設的でもないことは多く見られます。

このことはミーティングの場での「イシュー(論点)の設定」でも同じです。これが曖昧だと、メンバーそれぞれが考えていることが違いますから、議論が噛み合わなくなります。

たとえば「顧客満足度の向上」をとっても、「製品やサービスの強化」なのか「顧客への対応方法の強化」なのか明確にしなければ、いつまでたっても話が前に進まなくなります。

相手に信頼してもらうためにも、誤解や齟齬をまねかないためにも、「言葉の定義」は明確にすることを心がけたいものです。

 

中小企業診断士

三枝 元

 

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