ごえんをつなぐコラム

四格を育む⑤

真の地方創生の姿~飯田市の地域人教育に学ぶ

DATE18.09.18

18年2月20日(火)、日本経済新聞社主催の地方創生フォーラムで、飯田市の牧野光朗市長による「地域内発型の産業振興と地域人教育~コミュニティと産業界の調和~」というテーマの講演を非常に興味深く聞かせていただいた。人口10万人の地方都市が人口減少、少子・高齢化という難題に如何に立ち向かい克服しようとしているか。その原点が、「地域人教育」という。地域人とは、地域を「愛」し、「理解」して、地域に「貢献」する人材と定義され、地域人教育の仕組みとは飯田OIDE長姫高校と松本大学と飯田市がパートナーシップ協定を締結し、高校商業科の授業実践の中で、地域人の育成を図るというものだ。

私が特に注目したのは、飯田OIDE長姫高校の「地域の課題解決のために自分たちで考え行動する実践集団」を意味するSturdy Egg(スタディ エッグ:勇敢な卵)の活動で、水引(地域の伝統工芸品)産業の振興をテーマとした研究発表『水引でつなぐ結のまち飯田』で、平成29年度第25回全国高等学校生徒商業研究発表大会優秀賞を受賞した、という牧野市長のお話であった。

当協会のロゴが水引をモチーフにしたものでもあることから、優秀賞に輝いた高校生や指導された先生に是非会ってお話を聞いてみたいと思い、早速飯田市にそして飯田OIDE長姫高校を訪問させていただいた。研究テーマに取組んだ高校生の皆さんにはお会い出来なかったが、指導担当教諭の國松秋穂先生に詳しくお話を伺うことが出来た。企画面では、研究テーマ設定の経緯、水引の研究調査、SWOT分析など、また実践面では資金調達、ワークショップ開催、イノベーションへのチャレンジなど、そして最終的には検証へと繋がる研究成果には心を打たれた。何をおいても純粋な気持ちで地域の人たちと触れ合い、心から自分たちの地域、わが町を豊かにしたいという高校生の気持ちが伝わってくることだ。

「Experience~水引でつなぐ 結のまち飯田~」という27ページにわたる研究レポートを拝見すると、この活動自体がかなりのハードワークの連続であっただろうと思う。そのような中でも、國松先生によると研究に携わった高校生自身から自発的にフィリップ・コトラーの「コトラーのマーケティング」などの専門書も読破しチャレンジしていたという。
研究レポートの最終ページに「楽しみとは苦しみを伴いながら、生み出していくこと。」と、結ばれている。あらためて研究に取組まれた飯田OIDE長姫高校の高校生、教諭の皆さんに敬意を表したい。

地域の活性化や地方創生への取り組みには、まずはその地域のことを知り尽くし、地域の人たちと触れ合い、純粋な気持ちで楽しみながら課題解決に取り組んでゆく姿勢こそが大切であり、そのような地域人の育成こそが真の地方創生に繋がるのではないかと痛感した。これからも飯田市が若者たちにより、ますます魅力的な街になることを心から願いたい。

一般社団法人日本金融人材育成協会理事
飯田 勝之

一覧に戻る