ごえんをつなぐコラム

四格を育む③

マネジメントの極意~名将から学ぶこと

DATE18.09.07

今年で第100回を迎える夏の全国高校野球大会。数々の名選手を生み感動の場面を見てきたが、今になっても語り継がれるエピソードは尽きないものだ。1992年の2回戦、星稜(石川)対明徳義塾(高知)で星稜の強打者・松井秀喜を5打席連続で敬遠四球とし、結果は3対2で明徳義塾が勝利したが、その結果明徳義塾は批判にさらされた。既に26年も前の出来事であるが、今でも記憶に強く残っている。

ライター・中村計氏によると、明徳義塾の名将・馬淵史郎監督は試合の目的である「勝利を目指すこと」のために、勝利するための戦略として5度の敬遠を選択したのだと。ルール上は何の問題もないことではあるのだが、高校野球のあり方やひいてはスポーツそのものの意義についても議論される一件であった。

最近でもサッカーワールドカップでの日本代表チームの決勝トーナメント進出が懸かったグループステージの最終のポーランド戦において、終了間際に日本が選択したボール回しに徹すると言う試合運びが話題となった。この件でも西野朗監督の取った策について賛否両論が交わされた。西野朗監督もグループステージを勝ちあがるために最良の策を選んだのだろう。ポーランド戦のあとの記者会見での「本意ではない選択をしている」との発言からは、様々な状況を想定した上での究極の選択であったことが滲み出ている。結果として、事前の世間の評価を覆し、16強進出を果たした西野朗監督も日本サッカーの歴史に名を残すであろう。

時として、批判にさらされる監督の采配だが、馬淵監督と西野監督に共通するのは、議論の根本にあるのはルールと倫理的な観点にある。ルールからの逸脱が無いので有れば、道徳や倫理に反することがあってもよいのか、ということだ。そのような意味では、企業経営にも大いに通じるものがある。コンプライアンスに抵触するような行為は決して許されるべきものではないことは、言うまでもない。しかしながら、ギリギリのところで企業や組織が苦渋の決断をしなければならない時もあり、道徳的、倫理的な観点からは、時としては批判を浴びることにも直面する。その際には、マネジメントは「本意ではない選択」をせざるを得ない状況にも追い込まれるだろう。企業や組織の永続的繁栄のためには、ある時点では、大鉈を振るわざるを得ない切羽詰った状況もある。そのように考えて行くと、勝ち進んだ両監督の采配は評価に値するものであったのではないかと思う。

結果を残すためには、このような判断力と実行力が問われるケースがあることをスポーツの様々な場面で垣間見える名将と呼ばれるトップマネジメントから学べることも多いのではないだろうか。

一般社団法人日本金融人材育成協会理事
飯田 勝之

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